バンコクダークナイト

フィクション小説です。アフィリエイターとタイ・マフィアの戦いを描く。 ※リアルなタイを表現する上で、性的な内容も扱います。R18指定。

パヤシラ・ダークネス 第5話

「よう、久しぶりだな」

肩を叩いたのはカズヤだった。

「早かったな」

「ああ、夜中だったからスムーズに来れたよ」

「すまない、こんな時間に呼び出してしまって」

「構わんよ、ビジネスだ。何があったんだ?」

カズヤにこれまでの経緯を説明する。少し柄の悪い友人の到着に彼女も警戒しているようだ。こちらを時折睨み付けてくる。

「なるほど、その金を取ったのがあの女か。確かに美人だな」

「それと、恐らくあの女はクスリをやってる。肩の近くの上腕に注射器を刺した小さな傷跡があったから間違いない」

「注射器?タイ人なら炙って吸引するのが普通だが。まあその辺は何でもいい。結局タイシはどうしたいんだ?」

「クスリのことは言わなくても良い。6000バーツを何のサービスも受けてないコイツに渡すのが気に食わない。6000バーツが戻ってくればそれで良いと思ってる。」

「なるほど、簡単な仕事だな」

しばらく、カズヤに状況を説明していると警察が2、3人やって来た。警察を見るなり女はタイ語で何か話しかけている。速くて聞き取れない。カズヤは静かに耳を済ませている。

「向こうはカズヤがタイ語を理解出来るのを知らないだろう。何を言ってるか教えてくれ、それによって対応を考える。」

「わかった」

「どうせ、私はお金を取ってないとか嘘をついているんだろ。売女め」

「静かにしてくれ、これはややこしい事になりそうだぞ」

「どうした?」

カズヤの顔がみるみる雲っていく。

「あの女にはボーイフレンドがいて、そいつの知り合いが警察らしい。しかも、それなりに偉い役職、要は幹部のようだ。」

「何だって」

「金を取ったどうこうの話は全くしてない。女はその彼氏の知り合いの警官に連絡しようとしているみたいだ。警察も動揺している。」

女と警察の会話が途切れると、ツーリストポリスが警官に事の経緯を説明している。少々困った顔をしながら、警察とツーリストポリスがこちらに近づいて来る。

「彼女はやはり金を取っていないと言ってる」

ツーリストポリスが話しかけてきた。警官はただこちらを見ているだけだ。

「そんなはずはない。嘘だと思うなら彼女の持っている紙幣から指紋を採ればいい。俺の指紋が出るはずだ。」

ツーリストポリスがタイ語に翻訳して警官に伝える。

「君にそんな権限はないし、仮に指紋が残っていても証拠にはならないだろう」

「そうしたら、検査料として1万バーツ払う。それならどうだ?」

間接的な賄賂の提案だ。ここまで来たら金なんてどうでもいい。こちらが正しい事を証明したい。警察も少し心が揺れている。

1万バーツは日本円で約3万円。こっちは数万円なんて金はちっとも惜しくない。6000バーツを取り戻すためだけに、カズヤへのバイト代を含め日本円で6万円近い出費である。こうなったらもはや意地だ。

警官は彼女の方へ近づき何か話している。カズヤは近づいて、警官の話す会話をこっそり聞き取っているようだ。

「あの女は取っていないの一点張りだ」

「こうなったら、覚醒剤の事を言おう。これならタイ警察も動くはずだ」

「落ち着けタイシ。この状態で警官に覚醒剤の事を伝えてもお前が逆にマークされるだけだぞ。深く関わらない方が賢明だ。」

「6000バーツを諦めろというのか?」

「そうだ。お前にとっては大した金額ではないだろ?たかだか6000バーツのために警察や女のボーイフレンドから恨みを買うのは利口とは言えない」

このままあの女に6000バーツを取られるのは悔しいが、冷静に考えればカズヤの言う通りである。警察をコントロール出来る相手にタイで真っ向勝負を挑もうとする方が馬鹿だ。

「わかった」

カズヤにそう答えると、ツーリストポリスや警官の方へ向かった。

「6000バーツは彼女にくれてやる。俺はホテルへ帰る。」

そう伝えるた後、彼女の顔を睨みつける。彼女は寂しそうな顔をしている。今更罪悪感に苛まれているのだろうか?

前を向いてカズヤとシラヤーストリート入口、ファーストロード方面へ歩いて行く。

「俺は明日仕事だ。家に帰るぞ。」

「わかった。約束の6000バーツだ。」

「確かに。また、何かあればいつでも連絡しろよ。」

「そうだな、助かったよ」

「じゃあな」

そういうとカズヤはファーストロードにあるバービア前に停めてあったバイクへまたがる。店の女の子とは顔見知りで、ちょっとの間だけ置かしてもらっていたようだ。

ヘルメットを被り、セカンドロード方面へ向かって行った。

「12000バーツ、日本円で4万円弱か。本当に馬鹿な事をした。」

初めは腹が立ったが、ここまでしてダメなら諦めが付く。悔しい思いはあるが、これも勉強だと自分に言い聞かせる。

セカンドロードへ歩いて向かい、停車しているソンテウへ乗り込む。このソンテウはセカンドロードの端から端までを走る。巡回ルート上で降りればわずか10バーツだ。

「ソンテウなら1200回乗れる額をドブに捨てた。」

ソンテウは荷台が一杯になれば発進する。次々と一夜限りのカップルが乗り込んでくる。今日は誰も抱きたいとは思えない。このまま1人で帰ろう。

回りを見ないように、会話を聞かないように下を向きながらスマートフォンをいじる。以前ホテルに連れ帰った女性何人かにメッセージを送ってみる。

そうこうするうちにソンテウは満員になり、セカンドロードを北上し始めた。

今日は色々と反省点がある。

なぜ、トラブルを抱えた、相場以上の金を要求する女を持ち帰ったのか?

なぜ、セックスをする前に金を渡したのか?

そもそもあんなに感情の起伏が激しい女は危険だとなぜ避けなかったのか?

怒りが込み上げて来たので、反省するのは辞めよう。むしろ事件になるような大きなトラブルに巻き込まれなかっただけましだ。それにただが12000バーツ、日本円で4万円ぐらい半日で稼げているじゃないか。

考え事をしているとソンテウはホテル前の小道を通り過ぎていた。欧米人と若いタイ人女性のカップルを追いかけるようにソンテウを降りる。

助手席側の窓から手を伸ばしてくる運転手の手のひらに10バーツを渡す。

「コップンカップ(ありがとう)」

普段礼なんて言うことがないソンテウの運転手にお礼を言われた。日本だったら当たり前だがここはタイである。ビックリしたが、少し嬉しい気持ちになった。

「ここはタイだ。今日の事は忘れて明日からおもいっきり楽しもう。」

一方通行になっているセカンドロードを逆方向に歩きながらホテルへと向かって歩いた。

 

つづく・・・

パヤシラ・ダークネス 第4話

女をホテルへ連れて帰った事を後悔しても仕方が無い。今は6000バーツを取り戻す手段だけを考えよう。

部屋の扉の前に立ち、彼女の退路を断ちつつ動きを注視した。彼女はなぜか部屋をキョロキョロと見回している。部屋の中で何かを探し回っているようだ。

そう言えばこの女、ディスコではカバンを持っていた。それが今は持っていない。ソンテウに乗る前、ディスコから出た時にはすでに持っていなかった。ディスコにあったテーブル下のカバン入れに置き忘れのかもしれない。おそらく携帯も持っていないだろう。彼女は自力で警察を呼ぶことが出来ない。

力ずくでお金を取り戻す事も出来るだろうが、騒がれると厄介だ。

セックスを強要する事は出来るかもしれないが、こんな状況では気分が乗らない。すっかり冷めてしまった。

気晴らしに殴りつけてやろうか?そんな事は出来るはずがない。彼女もそれを知ってて、比較的温厚な日本人をターゲットにしているのだろう。欧米人や中国人のチンピラだったら、すでに殴り飛ばしているはずだ。

興奮冷めやらぬ彼女をこれ以上刺激するのも良くない。ホテルの客やスタッフに通報される恐れがある。一旦落ち着かせて、何とかお金を奪い返す方法を考える事にする。

彼女は何かをずっと探している。普通であればディスコにカバンを忘れた事などすぐに気が付くはずだ。明らかに挙動がおかしい。ドラッグか何かをやっているのかもしれない。ただ、見た感じ彼女が現在ドラッグを所持しているとは思えない。

それでも、この日起こったことを正直に警察へ伝えるのが、リスクの回避のためにも良さそうだ。しばらくタイには滞在する予定だし、後々面倒になる可能性もある。

地元の警察を呼ばれる前に、英語でコミュニケーションが取れるツーリストポリスに相談しよう。ツーリストポリスは欧米人のボランティアもいる。ツーリストポリスに相談するにしても、タイ語の出来る通訳は用意した方が良いだろう。警察にそのまま引き継がれる事もあり、状況を正確に説明できなければ、やはり女に都合の良い事しか警察に伝わらない可能性もある。

パヤシラに住んでる日本人の知り合いがいるので、彼に連絡してみる事にする。名前はカズヤ。タイ人の母親を持つハーフで、日本語はもちろん、タイ語もネイティブ並に話すことが出来る。パヤシラにある現地の会社で働いているサラリーマンだ。

今の時間は平日の午前2時過ぎ。明らかに寝ている。だが、状況的に気を使ってはいられない。電話で連絡してみることにする。

「プルプル...プルプル...」

呼出音がなっている。一度通話を終了し、もう一度かけ直してみる。申し訳ないが、起きるまで電話させてもらう。

「プルプル...プルプル...」「プルプル...プ..はい?」

「もしもし、タイシだけど」

「知ってる。何だよ、こんな時間に」

「...少し厄介な事になった」

「知るかよ。今何時だと思ってんだよ」

電話で起こされ、少し怒っているようだ。

彼は2つ年下の27歳だが、タイという海外にいるからか、話す時はいつもタメ口である。彼とは日本からタイへ来る時に飛行機で隣の席になり、スワンナプーム国際空港からパヤシラまで費用を半分に抑えるため、タクシーをシェアして仲良くなった。

そこから今まで2年間付き合いが続いている。とはいっても、何度か食事をした程度でそこまで仲良いわけでもない。俺の仕事もサイトを作っていると伝えたら、ウェブデザイナーだと勘違いして、こちらもそれを否定していない。

借りも無いのに助けてくれと言われても、正直図々しく感じるだろう。自分でもそう思う。しかし、現状を考えればタイ語でスムーズなやり取りが出来る彼は間違いなくこちら側に必要である。

「カズヤに通訳をお願いしたいんだけどいいかな?もちろん、金は払うよ。」

少し間が出来る。この時点で頼みを聞く方向性で話を進めようとするはずだ。彼はタイ企業で働く現地採用の日本人。いくらタイ語、日本語が出来ても彼の話を聞く限り給料は高くて月6万バーツ、日本円で22万円程度だ。夜の街で散財し、常にお金に困った生活をしているだろう。

お金を出せば頼みを聞いてくれる。悪い意味でタイに呑まれれば、お金の優先順位は上がる。彼女から6000バーツが戻って来ようが、来まいが関係ない。最悪の場合彼女に渡した6000バーツが戻らず、カズヤへも金を渡す事になる。それでも、このまま金だけ盗られて帰すのだけは許せなかった。

「通訳?何かあったのか?」

「女に金を取られた。そいつがちょっと厄介なんだ」

「わかった。行くかどうかは金額にもよるが、どこへ行けばいい?」

電話で詳細を聞くよりも先に会った方が速いと判断したのだろう。彼はトラブルの仲介も仕事で扱っているのを聞いたことがあった。こうした経験からか、こちらに手間を取らせないよう配慮してくれたようだ。

「まずはツーリストポリスに相談したい」

ツーリストポリスが常駐している場所としてシラヤーストリートが思い浮かんだ。

「ツーリストポリスってシラヤーストリートにいるよな?」

「この時間ならまだいるな」

「そうしたら、シラヤーストリートのツーリストポリスと話すことにするわ。こっちはソンテウを捕まえて、10分もあれば着くと思う」

「シラヤーストリートだと、今から家を出て飛ばしても20分はかかるな」

「今日の通訳してくれれば、6000バーツ払うよ。通訳が不要かも知れんけど、先に行って待ってるわ」

「結果として、俺の通訳が不要だったとしても金は約束しろよ?」

「もちろんだ」

 「よっしゃ、シラヤーストリートに着いたら連絡するわ」

カズヤとの電話を切る。彼女はすっかり大人しくなり、ベッドに座りこんでいた。それでもお金の入っているポケットはしっかりとガードしている。力づくで取ることは出来るだろうが、無理やり取れば騒ぎ立てるだろう。

彼女の体を腰から持ち上げて、変に刺激を与えないように部屋の扉まで背中を押して促す。足取りはしっかりとしているが、来た時とは明らかに様子が違う。お金をガードし警戒しながらこちらを睨みつけてくる。ツーリストポリスという単語は聞き取れたかもしれないが、どこへ向かうかはわかっていないだろう。

エレベーターに乗り、1階のフロントの前を通ると、さっきの受付スタッフが不思議そうな顔でこちらを見ている。フロントから身を乗り出して、こちらの心配をしてくれているようだ。しかし、説明しても状況は変わらない。そのままホテルを出て、ソンテウをつかまえるためセカンドロードまで歩いて行く。

彼女の腕を掴んで引っ張り、ゆっくりと歩いて進む。時折独り言でタイ語を話すが何と言っているかはわからない。
片方の腕を掴んでいるが、彼女はもう片手でしっかりとお金をガードしている。ただ、次の瞬間彼女はポケットから手をだして、こちらの手の上に置いた。彼女の腕の上で、2つの手が重なっている。こちらに肩を寄せて、もたれかかって来る。その仕草は、ここに来て何か助けを求めているようにも感じられた。

彼女は肩の出たノースリーブのドレスを来ている。街灯の下に行くと明るく2人が照らされる。
表情を覗きこむと少し不安そうな顔をしていた。そして、無意識に肩へ目をやると、上腕、肩に近い部分に無数の小さい穴が空いてる事に気付く。

「注射器を刺した跡、アイス(覚せい剤)か...」

複雑な気持ちになった。彼女がお金を盗んだのも薬のせいかもしれない。このまま警察に突き出しても良いのか?セカンドロードまですぐそこのところで足を止める。ただ、今日会った女にそこまでの同情する必要なんて無いだろう。ましてや、金を取られた身である。取られた金を取り返す事の方が重要だ。変に同情しないよう自分に言い聞かせる。

セカンドロードに停車しているソンテウのところまで行き、シラヤーストリートまでチャーターをお願いする。交渉すればもっと安くても済んだだろうが、はじめから100バーツを提示する。運転手もすぐにOKサインを出した。

シラヤーストリートはセカンドロードよりも1本海側のビーチロードの先端に位置している。ビーチロードは海岸沿いの道路だ。セカンドロードから脇道に入り、ビーチロードへ向かって行く。ソンテウから顔を出し進行方向を見ると、海岸沿いのライトに照らされ海が見えて来た。

今回の滞在で初めて海を見た。もっと違う形でここからのスタートを始めたかったと後悔ばかりが浮かぶ。彼女を抱え、海を見ながらそんな事を考えていると、カズヤからメッセージが来ていた。

「(警察と話すならIDは持っておけよ)」

外国人が海外でIDの代わりに使うのはパスポートである。パスポートはホテルへ置いてきたが、タイ旅行中はもしものときのためにパスポートのコピーを財布へ入れている。恐らくこれで問題ないだろう。もし、パスポート原本が必要ならばホテルへ取りに行けば良い。

この時間帯なので、車も少ない。ビーチロードを順調に飛ばして、5分程度でシラヤーストリートの前に着いた。彼女は相変わらず口を閉ざしたまま静かだった。ソンテウから下車し、100バーツを支払って、シラヤーストリートへ入って行く。すぐに、ツーリストポリスも視界に入って来た。彼女を抱えながら近づいて行くと、彼らと目が合った。ファラン(欧米人)のツーリストポリス2人だ。覚せい剤の事は黙っていよう。金さえ戻ればそれでいい。

英語で話しかける。

「すいません」

「どうしたんだ?」

「彼女にお金を盗まれたんだ」

しばらく、ツーリストポリスはうつむいている彼女の顔を覗き込んだ。

「そこに座ってくれ」

ツーリストポリスの車の前に置いてある机と椅子。ここに腰を掛けて詳細を説明する。

「で、いくら盗られたんだ?」

「6000バーツだ」

ツーリストポリスは彼女にも英語で話しかけるが、反応はない。ただ、タイ語で話しかけた瞬間に堰を切ったように弁明をし始めたようだ。ツーリストポリスが困った顔をしながらこちらに話しかける。

「彼女は取っていないと言っている」

「嘘だ。彼女のポケットには間違いなく俺から盗み取ったお金6000バーツが入っている」

再びツーリストポリスが彼女に話しかける。

「彼女は否認している。このまま窃盗の被害を訴えるのであれば、タイ警察を呼ぶが、どうする?」

「もちろん、呼んでくれ」
もう1人のツーリストポリスに指示をを出して、無線で警察を呼んでいるようだ。やはり、地元警察とのやり取りも必要になった。

「すぐに警察が来る。しばらく待ってくれ」

「わかった」

彼女は相変わらず静かだが、表情がさっきよりも不機嫌になっている。ソンテウに乗る前に見せた不安そうな顔は何だったのか?ディスコで会った時とも違ければ、ホテルの部屋で見せた彼女とも違う。本来の彼女はどれなのか?

ディスコ・シアトルで初めて彼女を見た時は怒られて泣いていた。第三者から見れば、怒っている方が悪者に見えるが、彼女も怒られて当然の事をしたからではないのか?あの時ここまで考えが回らなかった自分が腹立たしかった。彼女にとって都合の良いように、全てポジティブな方向に考えてしまっていたのである。

なぜ、こうなってしまったのか理由を考えてみる。やはり、自分の経験不足が招いた結果だろう。トラブルを抱えている女には、そのリスクがあったのだ。

今後こういったトラブルに巻き込まれないようにするにはどうすれば良いか?やはり、先に金を払ったのが間違いだっただろう。あれこれ考えながら警察を待っていると、突然誰かに肩を叩かれた。

 

つづく・・・

パヤシラ・ダークネス 第3話

彼女を抱えながらディスコの外へ出る。入り口にいた警備員達もこちらを見てクスクスと笑っている。彼女自体はそこまで重くない。このまま抱えて運び、停まっているソンテウに乗せる事も出来るだろう。ただ、テンションはそこまで上がっておらず、少し恥ずかしい。ディスコを出てすぐに彼女を降ろし、歩いてもらう事にした。

ディスコに出た後の彼女は上機嫌で、靴を脱ぎ、歌を歌っている。気に食わない事にはすぐに感情を露わにするが、思い通りになれば機嫌が良くなる。典型的なタイ人女性かもしれない。

ディスコ前の道路沿いに止まっているソンテウへ向かう途中も、抱きつき、熱いキスをしてくる。時折肩に手をかけてドレスの上をはだけようとするので、それを静止しつつソンテウへと向かった。

ディスコからホテルのソンテウは行きの2倍、3倍の値段を平気で吹っかけてくる。「100バーツ」で交渉するも200バーツから値を下げようとしない。別のソンテウに声を掛けようと思ったら、すでに彼女は荷台へと乗車してしまった。

彼女を降ろすのも面倒なので、やむなく200バーツでホテルまで向かってもらうことにした。

ソンテウに乗ってからもピッタリと体を寄せて唇を絡めて来る。それに答えるように唇を差し出していたが、名前をまだ聞いていなかった事にふと気がついた。彼女との会話も値段交渉以外ほとんどしていない。ホテルに着く前に聞いておこうと思った。

キスは続いているが、彼女から顔を離す。突然の事で驚いたようにこちらを見てくる。

「名前は何ていうの?」

「クゥン。あなたは?」

「俺はタイシ」

「タ...エ.シ?」

正確に発音してもらう事なんて望んでいない。タエシで頷くと、再び腕を首に回して唇を見つめてくる。このまま身を預けると理性を失いそうになる。自分を抑えるのに必死だった。

ホテルの前に着いたので荷台から降りる。助手席側の窓が開いているので、そこから手を伸ばし、ソンテウの運転手に200バーツを渡した。

車から離れようとすると、「100バーツ足りないぞ、あと100バーツだ!」と運転手が騒ぎ始めた。移動中、荷台でイチャイチャしていたのがよっぽど気に食わなかったのか、最初から300バーツと言ったつもりだったのかはわからない。

このまま無視してホテルへ入っても良かったが、こういう時はトラブルを起こさないためにも素直に従った方が良いだろう。100バーツ、日本円でただが300円程度だ。

それでも腹が立ったので100バーツを投げるように渡しソンテウを離れた。怒って怒鳴りつけているが、無視してホテルへと向かう。

絡み付いてくる彼女を支えながらホテルへ入る。フロントの兄ちゃんは笑っている。

「ID(身分証)持ってる?」

海外のホテルではID(身分証)のチェックが必須となっている。チェックイン時に1人でも、連れ込む女性がいれなその人のIDもチェックされるのが普通だ。日本人は運転免許証、海外ではパスポートがIDになるが、タイ人の場合これらとは別にIDカードを持っている。

彼女にIDの有無を尋ねてもキスをしようと顔を近づけて来る。更に大きな声で訪ねても、それを止めようとしない。フロントの兄ちゃんも少し笑いながら、「オーケー、オーケー、ノープロブレム」と気を利かせてくれた。タイのホテルスタッフはこういったシチュエーションに慣れており、このように気を利かせてくれる人も多い。IDをフロントに渡さず部屋へと向かう。

ゴーゴーバーやバービア、カラオケ等、お店に所属している子と違い、どこにも属していないフリーの売春婦絡みの犯罪は多い。シャワーを浴びている間に財布から金銭を抜かれたり、睡眠薬を飲ませて昏酔強盗される観光客もいるぐらいだ。ただ、彼女の場合はかなり酔いが回っているのか、正常な判断が出来ていないように思える。足もおぼつかない。

人の目もあるので、部屋まで引きずるように早足で連れて行く事にする。エレベーター内でもベッタリと体を寄せてくる。エレベーター内の防犯カメラでさっきのスタッフにも見られているだろう。ドレスを脱ごうとするので止める。エレベーターを出て、廊下を歩く、部屋番号を確認した後、カードを通して扉を開ける。部屋に着くなり、ドレスを脱いで下着姿になった。やはりスタイルも良かった。

このまま1回行為に及ぼうかと、こちらも上の服を脱いでベッドの上に腰をかける。下着姿になった彼女は「朝まで一緒にいたい。」と甘えてくる。肩を押され、ベッドに倒された。
一緒にいても良いが、朝までとなれば当然値段は上がるだろう。

「いくら?」

「5000バーツ」

日本円で1万6千円程度である。バンコクのフリーの娼婦よりも高い値段を提示され少し悩んだが、彼女の提示額を受け入れる事にした。お金には困っていない。

「OK」

そう言って、ブラジャーの中に手を入れようとすると、「先に払って」と手を掴まれ静止された。

お金の先払いは経験上良い思いをした事がない。ロングで約束しても朝になる前に帰えられたり、サービスが雑になる女が殆どだ。

ただ、この状況下では先払いを拒否するという選択肢は無かった。財布へ手を伸ばし、5000バーツよりも1000バーツ多い6000バーツを出すと彼女の下着の中へと押し込む。1000バーツの追加チップは多過ぎるかもしれないが、それほど彼女は魅力的だった。

下着に入れた札を取り出し、枚数を確認すると「ありがとう」と言って立ち上がった。そのままドレスを手に取り、着始める。

今までの経験上先払いしても、さすがに行為無しに帰る子はいなかった。次の行動へ移るまでベッドに腰を掛けながらしばらく様子を見る事にする。何をするつもりだろう?

彼女はドレスを着ると、そのままドアの方へ向かいドアノブに手をかける。

「まさか帰るわけじゃないよな?」

驚いて思わず声を上げた。

「帰るわ」

そのまさかだった。先ほどの千鳥足が嘘のように、しっかりとした動きで扉を開ける。

「帰るなら、金を返せ!」

「嫌よ、これは私のお金よ!」

そのまま出て行こうとするので、立ち上がりドアが閉まる前に部屋を飛び出し腕を掴む。部屋へ引きずり込んで、ポケットに入れた6000バーツを取り出そうと、手を伸ばす。お金を取られないように手で抑え、もう片手で激しく抵抗し悲鳴を上げた。

「助けて!助けて!」

大声で悲鳴を上げ始めた。恐らく周りの部屋にも聞こえているだろう。まさかここまで凶変するとは思わなかった。

「わかった!わかった!金は取らない」

「私のお金よ!触らないで!警察を呼ぶわよ!」「警察には私の知り合いがたくさんいるわ!」

この状況で警察を呼ばれたら、明らかにこちらが不利だ。男女の性質の違いの他、タイ語で詳しく状況の説明出来る彼女が嘘を付いて事件をでっち上げるかもしれない。

本当に知り合いの警察が来た場合は尚更だろう。下手をすれば警察署に勾留されるかもしれない。

「最悪だ」

フリーの娼婦を買うリスクは前々から理解していたが、初めてそれを経験することになった。

 

つづく・・・

パヤシラ・ダークネス 第2話

俺はウェブサイトに広告を張り、そこから得られる収入で生活をしている。いわゆるアフィリエイターだ。ウェブサイトの作成はインターネット環境があればどこでも可能なので、場所に制限はない。ネット環境があれば世界のどこへいても出来る仕事である。
時間的な制限もない。好きなときに好きな場所へ行けるビジネスである。しかし、自身をコントロール出来ない俺がタイに住んだらきっと遊び呆けてしまい、仕事量も減るだろう。

サイト運営は仕事量が落ちてもすぐにはその影響が出ない。記事を投稿しても、それがお金を生むようになるのは早くても2カ月はかかる。直近の仕事量がすぐに売上に反映されない分、どうしても怠けてしまう。2ヶ月に1回タイへ行って、ノービザで滞在出来る30日ぐらいが丁度良いのである。

そんな事を考えつつ、パヤシラのディスコ「シアトル」でビールを飲みながらフロアを眺めている。知ってる曲が流れればリズムに乗せて体を動かしていた。まだ、今夜の相手は決めていない。もう少しいろんな子と話そうと、ビール瓶を持ち、カウンター席から離れてフロアを歩いて周る事にした。

奥にあるDJブースの前を通り、中心部を避けるようにフロアの隅を歩いて回って行く。人混みをかき分けながら、好みの女の子を探す。そろそろ1周する頃だった。大きな声がフロアの中央から聞こえて来た。

ディスコに流れる音楽にかき消されてあまり目立ってはいなかったが、女の子同士で喧嘩しているように見える。いや、喧嘩ではない。片方の女性が一方的にもう1人の女性を怒鳴っている。

タイで怒鳴り合いの喧嘩を見るのは珍しくないが、一方的に怒鳴りつけているのは珍しい。怒られている女性はうつ向いていて、顔はよく見えないが、どうやら泣いているようだ。もちろん、彼女達に何があったのかはわからない。

ただ、一方的に怒鳴りつけている人を見るのは、気分も良くない。周りもそう思っているのだろう。周囲の人々も冷たい視線を怒鳴る女性の方へ送っている。

そんな空気を察してか、怒鳴っていた女性が鞄を持って歩き出す。そして、うつ向く彼女の肩を強く押して突き飛ばし、外へ出て行った。押された彼女はバランスを崩して床に倒れそうになったが、後ろの男性が上手く抑えて、体を起こした。

周りの客がうつ向く彼女を慰める。どうやら泣いているようだ。

泣いている彼女の顔は良く見えなかったが、スタイルは良い。こんな時でも性的な目で女性を見てしまう。

ディスコのフロアを1周したが、ピンと来る子はいなかった。まだ時間も午前0時を回ったところである。ゴーゴーバーやカラオケ等の店が閉まる2時以降加わる女性に期待しようと思う。バーカウンターへ戻り、再び雰囲気に浸る。

フロアを見渡しても別段ラインナップに変化は無いようだ。ただ、さっきの泣いている女性が気になる。未だ下にうつむいたままであった。

彼女の周りにいる人達も最初は慰めていたが、どうも反応が薄いようで、気になっているようではあるが話し続けるのをためらっているようだ。

そんな彼女が気になりながら遠くからチラチラと見ていると、彼女は顔をあげテーブルの下に置いてあったカバンを持ち上げた。どうやら帰り支度を始めたようだ。

鏡で自分の確認をして、携帯をカバンへとしまうと同時に体の向きを変える。出口を確認するためだろうか、顔を上げて当たりを見回した時に、彼女と目が合った。

「綺麗だ」

スタイルも良いが、顔がとにかく好みのタイプだった。日本でもよく見る可愛らしいタイプの女性というより、彫りの深いタイ美人という感じである。色白だが中国系の華人とは違うタイプで、タイ北部でもよく見られるような女性だ。

すぐにビール瓶を持ったまま、彼女の方へ歩いて行く。10m、5mと近づくにつれて彼女と再び目が合った。テーブルを離れようとした彼女も足を止める。目を合わせたまま彼女へと近づき、前にあるテーブルに手をかける。

「今帰るところ?」と声をかける。

「イエス」と答える。顔は無表情のままだ。

「少しだけ話せる?」

「OK」と返事をもらい、ニッコリと笑顔を見せてくれた。涙を流していたせいか、目が少し腫れている。カバンをテーブルの下にしまい、体を近づけて来る。

タイの子は無表情で無愛想な子も多く、日本人女性のように愛嬌のある子ばかりではない。だから、たまにこういった愛嬌のある女性がいると、それだけでグッと惹かれるものがある。

娼婦かどうかは彼女たちの着ている服で大体分かる。露出度の高いドレスや体のラインが出るセクシーな服を着ていれば大体がそうである。この子もそうだ。胸の谷間がはっきり見える赤いドレスを着ている。

引き留めたのは良いが、何を話して良いかわからない。もう1人の女の子との喧嘩の理由には触れない方が良いだろうし、ここへはどのぐらいの頻度で来るのか聞いて見ようと思った。

目線をテーブルに向けて、「ええっと」と声をだし、簡単な英語に頭の中で変換している時だった。急に横から腰に手を巻き、抱きついて来る。ビール瓶を落としそうになったので、テーブルに置いた。少し酔っているようだ。無理に会話する必要も無さそうである。

言おうと思った言葉を飲み込み肩を抱き寄せると、彼女は顔を上げた。そのまま顔を上に上げて、舌を絡めながらキスをしてくる。

先ほどの出来事がショックだったのだろう。甘えるように口や体を絡ませる。

しばらく彼女に身を預けてみようと思った。ここはタイだ。周囲の目なんて気にして入られない。完全に受け身で、彼女の口撃をなされるままに受けることにした。しばらく、キスを続けていると、彼女の手が動く。自分の背中に手を回して、ドレスのファスナーを降ろし始める。ここで裸になるつもりだろうか?

一向に止める気配が無いので、こちらから顔を離す。目が合った瞬間、「ホテルへ来ない?」と訪ねてみた。

「いくら払ってくれる?」
「2000バーツでどう?」

2000-2500バーツがパヤシラの相場である。安い値段から提示するのは、タイでは普通の事だ。しかし、彼女の表情が一気に曇り、先ほど見せた優しい笑顔の残像も消えた。体を起こして後ろに下がり、2人の間には少し距離が出来た。

数ヶ月で相場が変わったとは思えない。そこまで失礼な額を提示したつもりはなかったが、値段を変えて聞いてみる。

「2500バーツ?」

2500という数字を出しても彼女が頷く事はなかった。少し怒っているのだろうか?顔を上げて彼女の方から金額を言ってきた。
「3000バーツよ」

3000バーツは日本円にして約1万円。相場としてはバンコクのテーメーカフェよりも高い値段である。

フリーの娼婦でここまで強気の金額を提示してくるのは珍しい。行為1回分ではなく、いわゆるロングタイムと呼ばれる朝までの額を提示しているのかもしれない。

「ロングタイムの値段?」この言葉にすぐに反応し、「ショートタイムに決まってるでしょ!」

徐々に不機嫌になる彼女。恐らくこれ以上値段を下げることは出来ないだろう。選択肢は3000バーツで持ち帰るか、持ち帰らないかのどちらかしかない。まだ午前2時前だ。繁華街の店が閉まってからやって来る女性を待っても良かった。ただ、キスをされてから、もうすでに気持ちは彼女に傾いていた。

「わかった。3000バーツでいいよ。」

彼女の顔も明るくなる。

「ありがとう」

首に腕を回され、彼女の顔の方へ引かれる。唇全体を覆うようにキスをしてくる。そのまま彼女を両手で抱え、ディスコの外へ出た。

 

つづく・・・

パヤシラ・ダークネス 第1話

タイのハブ空港であるスワンナプーム国際空港に到着しタクシーで2時間、ようやくタイ第二の都市パヤシラのホテルに到着した。時間は午後11時を回っている。そのままホテルで眠りについても良かったが、久しぶりのタイだ。初日の夜から街に繰り出したい。

パヤシラは、パヤシラ工業団地に日系企業が多く入居しているため、日本人も数多く住んでいる。ゴーゴーバーがひしめき合う「シラヤーストリート」の他、リトル東京とも呼ばれるヤターニという繁華街を抱えている。ヤターニには、バンコクのタニヤでは負けるものの、数多くの日本人向けカラオケが営業している。

こうしたゴーゴーバーやカラオケへ遊びに行くのも悪くないが、今日は少し踊りたい。日本から長い時間移動してきた。疲れてはいるが、気持ちは興奮していて、ホテルで休もうなんて思わなかった。

ホテルに荷物を置いて少し考えた後、パヤシラで一番大きなディスコ「シアトル」へ行くことにした。部屋をロックし、ホテルを出た後、パヤシラセカンドロード沿いに停車し、スマートフォンをイジっているソンテウの運転手に話かける。

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(ソンテウ。ピックアップトラックの荷台を改造した乗り合いタクシー。)

 

「ディスコ、シアトルまで行きたい。80バーツ?(disco Seattle,80Baht?)」

英語で運転手に伝える。値段はふっかけられるよりも、先にこちらから相場よりも少し安い金額を言うのがタイの鉄則だ。相場をだいたい知っている相手にボッタくろうと思うタイ人は少ない。「ハウ・マッチ?」と聞くよりは値段を抑えやすくなる。

大体の運転手は100バーツで行ってくれるので、それよりも少ない80バーツを提示した。断られたら100バーツで聞いて、それでもダメなら他の運転手にあたればいい。

「うーん、OK。」

100バーツと言い返されるかと思ったが、OKの返事をもらう。早速ソンテウの荷台へ乗り込む事にする。
シアトルまではセカンドロードから小道に入り10分もあれば着く。この時間帯は車も少なくどんどんスピードを上げて進んでいく。

 

移動している間に財布をチェックすると、1000バーツ札、100バーツ札の他に、20バーツ札が3枚しか無いことに気がつく。

タイに到着したばかりで細かい札を用意出来ていなかった。

ソンテウは小型のトラックを改造したもので、客はトラックの荷台部分に乗車する。わずかな隙間からでは外が見えない。現在どの辺りにいるかチェックするため荷台部分から顔を出してみる。すでにディスコ・シアトルが見えて来ていた。

ディスコ前でソンテウが止まる。荷台から降りて、運転手に100バーツ札を渡す。お釣りを用意しようとしたので、「大丈夫」と言って受け取らない意思を表した。元々80バーツだが、運転手は礼も言わず無表情。タイではこれが普通だ。

建物へ向かっている最中音楽が聞こえて来る。昼間まで日本にいたとは思えない。異国の地にあるディスコにテンションも上がってきた。

入口で入場料を払いドリンクチケットを受け取る。バーカウンターでビールを注文し受け取る。ダンスホールに入って行く。

途中何人かの女性と目を合わせる。テーブル席を見渡せる場所にあったカウンター席に座り、ビールを置く。振り返ると、未だに視線を送ってくる女性もいた。

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(フロアからこちらに視線を送る女性。イメージ画像)

 

彼女たちはディスコ客に紛れたフリーの娼婦達である。ハンサムから注目されたわけではないと自分でもわかっている。服装や顔、雰囲気で日本人か韓国人であると判断し、声をかけてくるように誘っているのだ。

席に着いてからも近くにいた女性がこちらを見てくる。ただ、久しぶりのタイである。しばらくは雰囲気に浸って音楽を聞く事にした。

タイのディスコは洋楽がほとんどだが稀にK-POPやタイソングも混ざっている。K-POPやタイソングは知らない曲も多いが、洋楽は普段聞く人なら知っているであろうメジャーなものばかりを流すので気分も乗り易い。体を揺らしながら目のあった女性にスマイルを送る。

深夜0時を周りホールにはどんどん新しい客が入って来て、テーブル席ではグループやカップル客がお酒の席で出来る簡単なゲームをしている。負けた方がウイスキーのショットを飲む。タイではよく見られる光景だ。

多くのタイ・リピーターはお気に入りの子を現地に持っているが、俺の場合やり取りが面倒で、日本に帰っている間に関係は切れてしまう。ディスコへはお気に入りの子と一緒に来て楽しみたいとは思うが、散財してしまうことも多いので、女性と一緒にディスコへ入りたいとは思えない。

タイのディスコの多くは、客がテーブルチャージの際、ボトル等に使った金額の一部を娼婦の女性にマージンとして渡している。ここシアトルも例外ではない。

ディスコへ踊りに行こうと女性に誘われた事がある人も多いだろう。彼女の友人からの誘いでそういった場所へ行く場合は、その友人にマージンが入っている。こうした理由からディスコへ来るのは毎回1人だ。ケチと言われればケチかもしれない。

思いにふけっていると、見た目上明らかに娼婦の女性が「Hi」と英語で話しかけてくる。目の前のテーブルで客待ちをしている女だ。

「どこから来たの?」

「日本だよ」

「(日本語で)コンバンワ!」

「こんばんわ」

「タイに住んでいるの?旅行?」

「旅行だよ」

これ以降も、目の合った子と一言二言の会話はするが、ピンと来る子がいない。

会話をしようと絡んでくる子はいても、興味がなければこちらから質問したり話題を出すことはない。こちらが黙っていると、諦めて別の男性に声をかけに行く。ゴーゴーバーだけでなく、ディスコでもこのような営業を受けることは良くある。

好みの女性はいるが、今日はもう少し異国の地の楽しい雰囲気に浸りながらお酒を飲みたかった。ディスコは5時までだし、まだ焦る事はない。

ホールを見渡すと、友人同士で楽しでいる外国人、タイ人達もいれば、一夜限りの相手を求めてせわしなく動いている男性や女性もいる。会話が一通り終わって、話題が尽きた後には値段交渉になる流れだ。

パヤシラの相場は一晩で2000-2500バーツ程度、日本円で6000ー8000円程度である。声を掛けたくなるぐらいのレベルの子は値下げに応じず、相場が大体決まっている。彼女達の間で情報を交換しながら値段を統一しているのだろう。

客は韓国人が最も多く、続いて日本人、中国人、欧米人といったところだろうか。シンガポールや香港、台湾、マレーシア等の中華系もいる。

目の前で一晩限りのカップルが次々と成立している。踊ったり、キスしたり一通り楽しんだ後、手を繋いでディスコを後にして行く。

日本にこもっている人間からすれば、こんな世界が存在するなんて夢にも思わないだろう。いつも異空間の中で、タイ旅行の始まりを感じるのである。

 

つづく・・・