バンコクダークナイト

フィクション小説です。アフィリエイターとタイ・マフィアの戦いを描く。 ※リアルなタイを表現する上で、性的な内容も扱います。R18指定。

パヤシラ・ダークネス 第1話

タイのハブ空港であるスワンナプーム国際空港に到着しタクシーで2時間、ようやくタイ第二の都市パヤシラのホテルに到着した。時間は午後11時を回っている。そのままホテルで眠りについても良かったが、久しぶりのタイだ。初日の夜から街に繰り出したい。

パヤシラは、パヤシラ工業団地に日系企業が多く入居しているため、日本人も数多く住んでいる。ゴーゴーバーがひしめき合う「シラヤーストリート」の他、リトル東京とも呼ばれるヤターニという繁華街を抱えている。ヤターニには、バンコクのタニヤでは負けるものの、数多くの日本人向けカラオケが営業している。

こうしたゴーゴーバーやカラオケへ遊びに行くのも悪くないが、今日は少し踊りたい。日本から長い時間移動してきた。疲れてはいるが、気持ちは興奮していて、ホテルで休もうなんて思わなかった。

ホテルに荷物を置いて少し考えた後、パヤシラで一番大きなディスコ「シアトル」へ行くことにした。部屋をロックし、ホテルを出た後、パヤシラセカンドロード沿いに停車し、スマートフォンをイジっているソンテウの運転手に話かける。

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(ソンテウ。ピックアップトラックの荷台を改造した乗り合いタクシー。)

 

「ディスコ、シアトルまで行きたい。80バーツ?(disco Seattle,80Baht?)」

英語で運転手に伝える。値段はふっかけられるよりも、先にこちらから相場よりも少し安い金額を言うのがタイの鉄則だ。相場をだいたい知っている相手にボッタくろうと思うタイ人は少ない。「ハウ・マッチ?」と聞くよりは値段を抑えやすくなる。

大体の運転手は100バーツで行ってくれるので、それよりも少ない80バーツを提示した。断られたら100バーツで聞いて、それでもダメなら他の運転手にあたればいい。

「うーん、OK。」

100バーツと言い返されるかと思ったが、OKの返事をもらう。早速ソンテウの荷台へ乗り込む事にする。
シアトルまではセカンドロードから小道に入り10分もあれば着く。この時間帯は車も少なくどんどんスピードを上げて進んでいく。

 

移動している間に財布をチェックすると、1000バーツ札、100バーツ札の他に、20バーツ札が3枚しか無いことに気がつく。

タイに到着したばかりで細かい札を用意出来ていなかった。

ソンテウは小型のトラックを改造したもので、客はトラックの荷台部分に乗車する。わずかな隙間からでは外が見えない。現在どの辺りにいるかチェックするため荷台部分から顔を出してみる。すでにディスコ・シアトルが見えて来ていた。

ディスコ前でソンテウが止まる。荷台から降りて、運転手に100バーツ札を渡す。お釣りを用意しようとしたので、「大丈夫」と言って受け取らない意思を表した。元々80バーツだが、運転手は礼も言わず無表情。タイではこれが普通だ。

建物へ向かっている最中音楽が聞こえて来る。昼間まで日本にいたとは思えない。異国の地にあるディスコにテンションも上がってきた。

入口で入場料を払いドリンクチケットを受け取る。バーカウンターでビールを注文し受け取る。ダンスホールに入って行く。

途中何人かの女性と目を合わせる。テーブル席を見渡せる場所にあったカウンター席に座り、ビールを置く。振り返ると、未だに視線を送ってくる女性もいた。

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(フロアからこちらに視線を送る女性。イメージ画像)

 

彼女たちはディスコ客に紛れたフリーの娼婦達である。ハンサムから注目されたわけではないと自分でもわかっている。服装や顔、雰囲気で日本人か韓国人であると判断し、声をかけてくるように誘っているのだ。

席に着いてからも近くにいた女性がこちらを見てくる。ただ、久しぶりのタイである。しばらくは雰囲気に浸って音楽を聞く事にした。

タイのディスコは洋楽がほとんどだが稀にK-POPやタイソングも混ざっている。K-POPやタイソングは知らない曲も多いが、洋楽は普段聞く人なら知っているであろうメジャーなものばかりを流すので気分も乗り易い。体を揺らしながら目のあった女性にスマイルを送る。

深夜0時を周りホールにはどんどん新しい客が入って来て、テーブル席ではグループやカップル客がお酒の席で出来る簡単なゲームをしている。負けた方がウイスキーのショットを飲む。タイではよく見られる光景だ。

多くのタイ・リピーターはお気に入りの子を現地に持っているが、俺の場合やり取りが面倒で、日本に帰っている間に関係は切れてしまう。ディスコへはお気に入りの子と一緒に来て楽しみたいとは思うが、散財してしまうことも多いので、女性と一緒にディスコへ入りたいとは思えない。

タイのディスコの多くは、客がテーブルチャージの際、ボトル等に使った金額の一部を娼婦の女性にマージンとして渡している。ここシアトルも例外ではない。

ディスコへ踊りに行こうと女性に誘われた事がある人も多いだろう。彼女の友人からの誘いでそういった場所へ行く場合は、その友人にマージンが入っている。こうした理由からディスコへ来るのは毎回1人だ。ケチと言われればケチかもしれない。

思いにふけっていると、見た目上明らかに娼婦の女性が「Hi」と英語で話しかけてくる。目の前のテーブルで客待ちをしている女だ。

「どこから来たの?」

「日本だよ」

「(日本語で)コンバンワ!」

「こんばんわ」

「タイに住んでいるの?旅行?」

「旅行だよ」

これ以降も、目の合った子と一言二言の会話はするが、ピンと来る子がいない。

会話をしようと絡んでくる子はいても、興味がなければこちらから質問したり話題を出すことはない。こちらが黙っていると、諦めて別の男性に声をかけに行く。ゴーゴーバーだけでなく、ディスコでもこのような営業を受けることは良くある。

好みの女性はいるが、今日はもう少し異国の地の楽しい雰囲気に浸りながらお酒を飲みたかった。ディスコは5時までだし、まだ焦る事はない。

ホールを見渡すと、友人同士で楽しでいる外国人、タイ人達もいれば、一夜限りの相手を求めてせわしなく動いている男性や女性もいる。会話が一通り終わって、話題が尽きた後には値段交渉になる流れだ。

パヤシラの相場は一晩で2000-2500バーツ程度、日本円で6000ー8000円程度である。声を掛けたくなるぐらいのレベルの子は値下げに応じず、相場が大体決まっている。彼女達の間で情報を交換しながら値段を統一しているのだろう。

客は韓国人が最も多く、続いて日本人、中国人、欧米人といったところだろうか。シンガポールや香港、台湾、マレーシア等の中華系もいる。

目の前で一晩限りのカップルが次々と成立している。踊ったり、キスしたり一通り楽しんだ後、手を繋いでディスコを後にして行く。

日本にこもっている人間からすれば、こんな世界が存在するなんて夢にも思わないだろう。いつも異空間の中で、タイ旅行の始まりを感じるのである。

 

つづく・・・