バンコクダークナイト

フィクション小説です。アフィリエイターとタイ・マフィアの戦いを描く。 ※リアルなタイを表現する上で、性的な内容も扱います。R18指定。

パヤシラ・ダークネス 第2話

俺はウェブサイトに広告を張り、そこから得られる収入で生活をしている。いわゆるアフィリエイターだ。ウェブサイトの作成はインターネット環境があればどこでも可能なので、場所に制限はない。ネット環境があれば世界のどこへいても出来る仕事である。
時間的な制限もない。好きなときに好きな場所へ行けるビジネスである。しかし、自身をコントロール出来ない俺がタイに住んだらきっと遊び呆けてしまい、仕事量も減るだろう。

サイト運営は仕事量が落ちてもすぐにはその影響が出ない。記事を投稿しても、それがお金を生むようになるのは早くても2カ月はかかる。直近の仕事量がすぐに売上に反映されない分、どうしても怠けてしまう。2ヶ月に1回タイへ行って、ノービザで滞在出来る30日ぐらいが丁度良いのである。

そんな事を考えつつ、パヤシラのディスコ「シアトル」でビールを飲みながらフロアを眺めている。知ってる曲が流れればリズムに乗せて体を動かしていた。まだ、今夜の相手は決めていない。もう少しいろんな子と話そうと、ビール瓶を持ち、カウンター席から離れてフロアを歩いて周る事にした。

奥にあるDJブースの前を通り、中心部を避けるようにフロアの隅を歩いて回って行く。人混みをかき分けながら、好みの女の子を探す。そろそろ1周する頃だった。大きな声がフロアの中央から聞こえて来た。

ディスコに流れる音楽にかき消されてあまり目立ってはいなかったが、女の子同士で喧嘩しているように見える。いや、喧嘩ではない。片方の女性が一方的にもう1人の女性を怒鳴っている。

タイで怒鳴り合いの喧嘩を見るのは珍しくないが、一方的に怒鳴りつけているのは珍しい。怒られている女性はうつ向いていて、顔はよく見えないが、どうやら泣いているようだ。もちろん、彼女達に何があったのかはわからない。

ただ、一方的に怒鳴りつけている人を見るのは、気分も良くない。周りもそう思っているのだろう。周囲の人々も冷たい視線を怒鳴る女性の方へ送っている。

そんな空気を察してか、怒鳴っていた女性が鞄を持って歩き出す。そして、うつ向く彼女の肩を強く押して突き飛ばし、外へ出て行った。押された彼女はバランスを崩して床に倒れそうになったが、後ろの男性が上手く抑えて、体を起こした。

周りの客がうつ向く彼女を慰める。どうやら泣いているようだ。

泣いている彼女の顔は良く見えなかったが、スタイルは良い。こんな時でも性的な目で女性を見てしまう。

ディスコのフロアを1周したが、ピンと来る子はいなかった。まだ時間も午前0時を回ったところである。ゴーゴーバーやカラオケ等の店が閉まる2時以降加わる女性に期待しようと思う。バーカウンターへ戻り、再び雰囲気に浸る。

フロアを見渡しても別段ラインナップに変化は無いようだ。ただ、さっきの泣いている女性が気になる。未だ下にうつむいたままであった。

彼女の周りにいる人達も最初は慰めていたが、どうも反応が薄いようで、気になっているようではあるが話し続けるのをためらっているようだ。

そんな彼女が気になりながら遠くからチラチラと見ていると、彼女は顔をあげテーブルの下に置いてあったカバンを持ち上げた。どうやら帰り支度を始めたようだ。

鏡で自分の確認をして、携帯をカバンへとしまうと同時に体の向きを変える。出口を確認するためだろうか、顔を上げて当たりを見回した時に、彼女と目が合った。

「綺麗だ」

スタイルも良いが、顔がとにかく好みのタイプだった。日本でもよく見る可愛らしいタイプの女性というより、彫りの深いタイ美人という感じである。色白だが中国系の華人とは違うタイプで、タイ北部でもよく見られるような女性だ。

すぐにビール瓶を持ったまま、彼女の方へ歩いて行く。10m、5mと近づくにつれて彼女と再び目が合った。テーブルを離れようとした彼女も足を止める。目を合わせたまま彼女へと近づき、前にあるテーブルに手をかける。

「今帰るところ?」と声をかける。

「イエス」と答える。顔は無表情のままだ。

「少しだけ話せる?」

「OK」と返事をもらい、ニッコリと笑顔を見せてくれた。涙を流していたせいか、目が少し腫れている。カバンをテーブルの下にしまい、体を近づけて来る。

タイの子は無表情で無愛想な子も多く、日本人女性のように愛嬌のある子ばかりではない。だから、たまにこういった愛嬌のある女性がいると、それだけでグッと惹かれるものがある。

娼婦かどうかは彼女たちの着ている服で大体分かる。露出度の高いドレスや体のラインが出るセクシーな服を着ていれば大体がそうである。この子もそうだ。胸の谷間がはっきり見える赤いドレスを着ている。

引き留めたのは良いが、何を話して良いかわからない。もう1人の女の子との喧嘩の理由には触れない方が良いだろうし、ここへはどのぐらいの頻度で来るのか聞いて見ようと思った。

目線をテーブルに向けて、「ええっと」と声をだし、簡単な英語に頭の中で変換している時だった。急に横から腰に手を巻き、抱きついて来る。ビール瓶を落としそうになったので、テーブルに置いた。少し酔っているようだ。無理に会話する必要も無さそうである。

言おうと思った言葉を飲み込み肩を抱き寄せると、彼女は顔を上げた。そのまま顔を上に上げて、舌を絡めながらキスをしてくる。

先ほどの出来事がショックだったのだろう。甘えるように口や体を絡ませる。

しばらく彼女に身を預けてみようと思った。ここはタイだ。周囲の目なんて気にして入られない。完全に受け身で、彼女の口撃をなされるままに受けることにした。しばらく、キスを続けていると、彼女の手が動く。自分の背中に手を回して、ドレスのファスナーを降ろし始める。ここで裸になるつもりだろうか?

一向に止める気配が無いので、こちらから顔を離す。目が合った瞬間、「ホテルへ来ない?」と訪ねてみた。

「いくら払ってくれる?」
「2000バーツでどう?」

2000-2500バーツがパヤシラの相場である。安い値段から提示するのは、タイでは普通の事だ。しかし、彼女の表情が一気に曇り、先ほど見せた優しい笑顔の残像も消えた。体を起こして後ろに下がり、2人の間には少し距離が出来た。

数ヶ月で相場が変わったとは思えない。そこまで失礼な額を提示したつもりはなかったが、値段を変えて聞いてみる。

「2500バーツ?」

2500という数字を出しても彼女が頷く事はなかった。少し怒っているのだろうか?顔を上げて彼女の方から金額を言ってきた。
「3000バーツよ」

3000バーツは日本円にして約1万円。相場としてはバンコクのテーメーカフェよりも高い値段である。

フリーの娼婦でここまで強気の金額を提示してくるのは珍しい。行為1回分ではなく、いわゆるロングタイムと呼ばれる朝までの額を提示しているのかもしれない。

「ロングタイムの値段?」この言葉にすぐに反応し、「ショートタイムに決まってるでしょ!」

徐々に不機嫌になる彼女。恐らくこれ以上値段を下げることは出来ないだろう。選択肢は3000バーツで持ち帰るか、持ち帰らないかのどちらかしかない。まだ午前2時前だ。繁華街の店が閉まってからやって来る女性を待っても良かった。ただ、キスをされてから、もうすでに気持ちは彼女に傾いていた。

「わかった。3000バーツでいいよ。」

彼女の顔も明るくなる。

「ありがとう」

首に腕を回され、彼女の顔の方へ引かれる。唇全体を覆うようにキスをしてくる。そのまま彼女を両手で抱え、ディスコの外へ出た。

 

つづく・・・